稚魚を上手に育てよう

 卵から無事に孵化する事ができれば、そこには透き通るようなかわいい稚魚の姿を目にすることができます。最初は卵と見違えるほど大きなヨークサックを身につけています。また産卵に気付かず、ある日突然水槽に稚魚が!と言うことも多々あります。ヨークサックを付けたままシェルターから飛び出してくる子もいますし、だいたい生後10日から2週間くらいたつと稚魚は自然とシェルターから出てきますので、ヨークサックもほぼなくなり、身体にしっかりとゼブラ模様が浮かんだ子を見つける場合もあります。稚魚たちはそのままでも上手く育つ子もいれば、親と一緒では餌が上手くとれず、最悪死んでしまう子もいます。稚魚を捕まえるのはとてもたいへんな事ですが、できれば稚魚を安心して育成できるようなところに隔離し、飼育することを薦めます。また1匹いたら他にもいる可能性がありますので、水槽内を細かく観察してみましょう。


稚魚を飼育するには
 稚魚を飼育するには幾つかの方法があります。1)親と一緒の水槽で飼育する、2)親と一緒の水槽で別隔離して飼育する、3)別の専用水槽で飼育する等です。(1)は先程書きましたが、餌がうまくとれないことがあり、次第に痩せていくものがでて来る場合があります。(2)は産卵箱を使うのが一般的です。こちらも上手く育たないことがありますが、現状では一番使われている方法だと思います。隔離するか否かの判断は飼育環境によっても変わってきますので、一概に隔離飼育の方が良いとはいいきれないところです。また(3)に関しては、ヨークサックがついた稚魚は想像以上に水質変化に弱いですから、なるべくヨークサックが吸収され身体がしっかりとした頃を見計らって行うのがよいでしょう。もし早めの段階でやるのであれば、水槽の水ごと移動するのが安全だと思います。育成中は残り餌などをなるべく取り除き、飼育環境を常に清潔にしておくようにします。また産卵箱などに隔離をする場合は、水が澱まないよう、水が常に入れ替わるよう工夫して下さい。飼育者の好みですが、流木や陶器など隠れ家的なモノをいれる時は、稚魚の状態がすぐにわかるよう潜り込んでしまうようなものはさけ、メンテナンスが楽に行えるモノを選んだほうが良いと思います。

ヨークサックを付けた稚魚を捕まえるには
 先程も述べましたが、稚魚はしばらくたつとシェルターから自然と出てきます。これは自主的に出てくるのか、親に追い出されるのかよく分かっていません。身体がしっかりとしてからならばよいのですが、たまに大きなヨークサックを付けた稚魚がシェルターから飛び出してくることがあります。この稚魚を捕まえるのは想像以上に大変です。水槽底面を這うように移動する稚魚は、通常の網ではなかなか捕まえることができません。これを捕まえるのに良い方法として、ポリ製のスポイトを使うやり方があります。よく熱帯魚屋に置いてあるもので、なるべく大きいモノを選び、その細い部分をばっさりと切り落とします(図参考)。これを使い稚魚をなるべくゆっくりと吸い上げるように使用します。あまり勢いよく稚魚を吸い取るとダメージを与えてしまい、最悪死んでしまうこともありますので十分注意して行ってください。

稚魚をシェルターから取り出す場合は
 シェルターから稚魚を取り出す方法としては、1)シェルターをコップをゆすぐような動作を繰り返し出すと、2)シェルターの底を上にして、スポイトなどで徐々にエアーを入れ下に降ろしてくる方法がありあます。前者の場合かなり稚魚に負担をかけ決して良い方法とは言えませんので、加減して行って下さい。後者もエアーの量が多いと稚魚が空気中に取り残される場合がありますので、ゆっくりと時間をかけて行います。割と早い段階では吸い付く力も弱く取り出しやすいのですが、ヨークサックを付けた稚魚はとても弱いので注意が必要です。稚魚を取り出すか否かは人によってさまざまです。稚魚は無理に取りださなくても自然とシェルターからでてきますから、その判断は飼育者にまかされるところです。

稚魚の餌は
 特に親に与えていると変わりません。人間用のクロレラも食べるようです。それらを砕いたりつぶしたりして与えます。ただし食べる量は本当に微量なので、水質悪化を避けるよう量に注意して下さい。ヨークサックが大きい時はそれを栄養分として吸収している為、餌を食べないと聞きます。時期を見計らって与えている人もいますが、食べ始める時期の判断が難しい方は、水を汚さない程度微量入れておくのも手だと思います。クロレラは食べるとお腹の色が緑になるので、食べているかどうかの判断になるようです。

水替え
 インペの稚魚はとても水質に敏感です。水替えを行う際は水質が急激に変化しないようくれぐれも注意してください。水替えによって稚魚が死亡したという報告例もいくつかあり、特に孵化後数週間は注意が必要です。できれば一回の水替えの量も1/4程度にとどめ、極力稚魚に刺激がないようにします。稚魚を隔離している産卵箱に、直接新しい水を入れるようなことだけは、けっしてやってはいけません。

稚魚が死んでしまう
 原因は断定できず、いろいろな原因が考えられると思います。まずは検査薬などを使い水質を調べてみましょう。アンモニア・亜硝酸・硝酸などの濃度が高いのは死亡原因の一つとされます。また先程書いた水替えによる水質の急変で死亡したという報告例もあります。そのほか雑菌やカビ、飼育環境底面の汚れなども稚魚に与える影響は大きく、死亡もしくは奇形などの原因に繋がるのではと考えられています。原因は一つの場合もあれば、複数が重なって起きている可能性もあります。飼育されている環境毎に原因は異なると思いますので、多方面からの見直しをする必要性が出てくるかもしれません。

 孵化してから1ヶ月が非常に難しい時期とされます。しっかりと管理していても稚魚が落ちてしまうのは多々あることです。また順調だと思ってある日、エラの奇形などに気付くことがあります。これらはインペのブリーディングを試みる上で避けられない問題だと思います。今後もよりよい稚魚の飼育スタイルを模索していく必要があるのでしょう。

※注意事項
 このページに上げられているいくつかの方法は、現状いろいろ行われているインペ飼育においての一方法としてお考え下さい。けっしてこれらが最良の方法というわけではありません。またこれらを行う際は飼育者の判断のもとで、あくまでも自己責任の上で行ってください。