どうすれば産卵するんだろう…
最初に書いておきますが、これは「こうすれば産む!」と言うために書いたものではありません。タイトルの通り「こんなにしてるのに、なんで産まないんだろう…」という事をつらつら書きつらねたものです。ただいろいろやってきたこと、聞いたことも書いてますんで、なにかのヒントになるかもしれません。
インペの飼育を楽しむうえで、繁殖を考えるととても難しい事に気づきます。気むずかしいというか、産むときは適当に産むし、産まないときは何をやっても全く産まない、というのがインペです。もちろん条件として成熟したペアがそろい、メスが抱卵しているとしても、産卵しないというのはどういう事なんでしょうね。そのためにインペ飼育者はいろいろな事をして、何とか産卵してもらおうと努力(もしくは我慢)の日々のを積み重ねているんだろうと思います。
先ほども書きましたが、インペは産むときは産みます。だからシェルターを入れただけでも、ある日卵を発見することがあります。こういうケースに巡り会えばその人は当たりです。この当たりも3億円宝くじよりは確率が高いとしても、そうそう当たるものではありません。でもくじと違うところは、なんかしてれば当たりを引ける可能性があることではないでしょうか。ではインペを産卵させる為にどんなことをしているのか書いてみようと思います。私が書くことは、自分の経験の他、ネット(国内・国外)、本、知人など様々なところから得た情報をまとめたものなので、文章によってはどこからか抜粋されたように感じられるかもしれません。ですが、なるべく自分の言葉で書いていこうと思います。またここに書いてある事を実行したからといって産卵するわけではありません。だから「どうすれば産卵するんだろう…(てんてんてん)」なんです。その1) まずは有力な種親を
まず成熟したインペをそろえることが第一条件です。水槽に対してどの程度の密度で飼育すればいいのかはわかりませんが、60cm規格水槽ならば保険をかけて最低5〜6匹は飼育したいです。その際オスメスの内分けですが、海外のサイトなどで調べると、インペはハーレムを形成するような事が書いてあり、メス比率をあげたほうがいいようです。保険というのはオスが1匹だと性的に成熟していなかったり、気が強くメスとの相性が合わないなどの問題が生じる場合があるからです。ですからオス×2、メス×4あたりがいいのではないでしょうか。またオスメスの相性はとても重要なようで、ペアがそろえば産卵するという事でもないようです。それともう一つ問題としてオスメス判別が異常に難しい事があげられます。オスメス判別はベテランでも迷うところです。メスの数が極端に少ないという話もありますが、真相は今のところわかっていません。その2) とりあえず環境を
次に環境を整えます。インペの繁殖で一般的に言われているのは、水温28度、弱アルカリの水質、強めの水流、そして産卵床のシェルターを入れることだと思います。この条件で産卵してくれれば何の苦労もないですし、またこの条件でなくても産卵はしていますので、なかなか産まないけど、条件は厳しくないという事でしょうか。もう少し細かく説明してみましょう。
●水温
日本では28度に設定している方が多いと思います。海外のサイトなどを参考にすると82〜86゜F(28〜30度)に保つとあります。私のところでは26度台の水温でも産卵を確認しています。ただ昨年6月頃に、ある掲示板にて産卵報告のラッシュがあったように水温の上昇はインペの繁殖に何らかの関係があるのかもしれません。と思って水温を28度から30度まであげて約一ヶ月飼育しましたが、産卵しないというのはどういう事なんでしょう…。ナゾです。
●水質
海外のサイトではph6-8とあります。私もこの範囲であれば問題ないと思います。インペには弱アルカリの水が好ましいような事を聞いた事がありますが、それが真実なのかはわかりません。ただ、実際に珊瑚などを入れ弱アルカリに保っている人もいます(私も何本かの水槽に入れてます)。以前インペが住んでいるシングー川の水質を調べようとしましたが、ネット上では探すことができませんでした。インペの生息地はペーハーが8とか9あると言っていた人がいましたが、本当なんでしょうか…。
(*追加:その後アクアライフ2005年7月号でシングー川のペーハーは7.5位だという記述がありました。)
●水流
インペは流れが強い岩がゴロゴロしたところに住んでいるそうです。と言うわけで水流が必要ではないかと考えられています。水槽には投げ込み式フィルターなどで水流を付けている人が多いと思います。ただあまり水流をつけなくても繁殖させている人もいます。ある外国のサイトでは毎時3〜6回以上タンクの水を回し、水運動と通気を与えると書いてあります。これにより水の中に溶けている酸素の量を増やすという目的もありそうです。エアレーションを強くするというのもどこかで見かけました。
●シェルター
繁殖を試みるならシェルターは必須なのかもしれません。その為、みないろいろ試されているようです。流木などの隙間や穴で繁殖しているケースもありますが、繁殖実績が多いのは竹炭と焼き物のシェルターです。竹炭は市販のもの、焼き物シェルターは自分の思った形状を自作したり、最近では売っていたりします。余談ですが、実は私は2002年の時点で、すでに竹炭を使用していました。その時は水槽もリセットしてしまったので、水槽が崩壊し結果を見ることはできませんでした。状態よく飼育していればもっと沢山のインペの稚魚に出会えたかもしれませんね。話はもどりますが、形状はコップ型と言われる片方が塞がったものが日本では主流で、切り口は円形であったり少しつぶして楕円にしていたりします。海外のサイトでは両側が空いているトンネル型のシェルターに産卵している写真も見かけたことがあります。しかし卵が取り出しやすいようにトンネル型のシェルターの片側をコルクで栓をする方法もあるようなので、これなのかもしれません。またこれも海外のサイトで見かけたのですが、奥に行くにしたがって先細になるシェルターが良いとありました。これには思い当たる節もありますので試してみる価値はあるかもしれません。
その3) レイアウトは?
私の場合、インペ専用水槽の為、現地の状況を想像し岩組をしましたが、シェルターだけの水槽でも産卵は行います。ただでさえシェルターの下にゴミが溜まるのに、岩の下にも餌の食べ残しなどがあつまり、水をひどく傷ませるはめになってしまう場合もあります。ただ悪いことだけではなく、とても薄い隙間などにも入り込んでテリトリーを守る姿を見ると、やはり岩の隙間をそれもかなり窮屈なところを好むのだと感じられます。私が一時レイアウトにこだわったときの話をここで紹介します。一応その時は産卵に成功しましたが、ほんとにレイアウトのおかげだったのか、やはり不明です。また別の項で書いたように、インペは流れの強い岩がゴロゴロしたところにすんでいるとよく記載されていますが、さらにその「どこに」インペがいるかを想像することにしました。太陽の光が燦々と輝く岩の上にインペがいるわけがありません。それは陰になる岩の隙間やくぼみであろうと容易に想像がつきます。それならば、水槽内にも日向と日陰を作ればいいのではないかと考えたのです。なぜなら、すべてを暗くすれば行動範囲が広くなりますし、一カ所日陰を作ることで、インペを集めることができるからです。狭い水槽においてもインペはシェルターなどにこもってしまう事があるので、それではなにも起こらない、もしくは起こりづらいと考えました。もちろんその日陰においても数カ所の逃げ場を用意する必要があると思います。ただその狭い範囲で生活をすることによりつねにインペはお互いを意識しペアが誕生するのではないかと、そしてその日陰の奥にシェルターを1本だけ配置しまいた。よく小競り合いをし、時にはボロボロになったインペがでるなど心配事もありましたが、シェルターにはしっかりと卵をまもるオスの姿がありました。あくまでも参考程度の話ですがどうでしょう。それとどうしても繁殖だけを考えると淡泊なレイアウトになりがちです。そんな時は岩組で高さをだし立体感を持たせればインペにとっても、また飼育者も楽しめるレイアウトになると思います。その4) 水槽を取り巻く環境を考える
アクアリウムとして楽しむのであれば当然人のあつまる場所(例えばリビングなど)に設置されているケースが多いと思います。本当はインペが落ち着ける静かな刺激のない場所のほうがいいのでしょうが、そう簡単にはいかないものです。ただ私の経験からいうと、静かな場所で飼育するほど物音には敏感になりますし、ぎゃくに子供が走り回るリビングなどではインペも神経が図太くなるように思えます。時には子供がよっかかって水槽が動いてしまうような状況でも、インペは産卵してましたから、他の要因のほうが重要なのかもしれません。現在うちではほぼ私しか出入りしない部屋に水槽を設置しています。窓には遮光カーテンがついているので昼間でも目が慣れるまでは何も見えないほど真っ暗です。そこに平日は朝夜の餌をあげるほんの数分しか出入りしないのと、夜の数時間、一本の水槽だけがタイマーでライトがつくぐらいで、間違いなくインペにとってはくつろげる環境であると思います。だからといってぽこぽこ産卵する様子もないので、水槽を取り巻く環境はあまり気にする必要がないのかもしれませんね。よくよく考えてみると、インペが生息してる川の中って、常に相当な音量で流れの音が響いてるんですよね。その5) 水質変化で産卵誘発させる(ペーハー変動、温度変化、水替え)
人間の手によって飼育されている魚は自然界と違い、環境変化がなくなり一定になりがちです。魚によっては季節の変化を感じ取り、産卵行動にでるものも多くいます。そのため私たち飼育者が人為的に雨季の状態を作り産卵を誘発させる方法が有ります。ただブラジルのシングー川のインペが生息している付近の雨季とはどういうモノなのかがつかみづらいものがありあます。想像では水量が増えるため水温は下がり、いろんなモノがジャングルなどから流れ込むのでペーハーは下がると思います。以前私は雨季を表現しようとペーハーを下げる為ピートを入れたのですが、その時は水質の変化とともにエロモナス病が発病しとんでもない思いをしました。逆に珊瑚を入れた一ヶ月後に産卵したことがあり、それは何か意味を持つのかと考えています。一般的(この場合インペ飼育者)には28度以上の温度設定がいいとあるように、私が想像している雨季に産卵というのとはちょっと違うのかもしれませんね。
またコリドラスなどでは水温を下げて誘発させる技がありますが、インペの場合温度を下げるには非常に注意が必要です。それによっての産卵誘発は危険が伴うのでやったことはありません。常に26度くらいで飼育し、一気に28度のあげるほうが危険は少ないと思います。それも一度やってみましたが、ウチでは産卵しませんでした。ただ今のところ私自身のデータしかないので、すべてにおいてデータ不足だと言えます。
もう一つの手段として大量にかん水する方法があります。それによって水槽内の状態が一時的に変化し産卵が誘発されるというものです。ただこれもインペには有効なのか不明です。なぜなら私は仕事の状況により2〜3週間平気で水替えしない時があります。そんな時は水質変化も気にせず、1/2以上、もしかすると2/3かん水する場合もあるからです。それにより産卵を確認したことは今まで一度も有りません。ただよそでは水替え後に産卵したという話も聞いたことがあるので、一概に効果がないとは言い切れないのかもしれません。その6) 化学兵器を使用する
タイトルを見るととても恐ろしい事のように思えますが、内容はバクテリアやコンディショナーに関しての事です。バクテリアに関しては、それを入れることにより産卵が誘発されるというのはないと思いますが、それにより水質が良い状態に保もたれ、結果として産卵につながるというのはあり得ると思います。またコンディショナーにはビタミンやミネラルを補うモノ、産卵促進とうたっているものなどいろんなタイプがあります。コリドラスの産卵誘発ではテトラのバイタルを2倍量添加する方法がありますが、私がこれをまねてインペでやったら病気になったことがあります。ただ根拠もなしにやったわけではなく、雑誌でそのような記事を見てまねてみたのです。誤解されては困りますが、規定の2倍量を添加した時点で、すでに使用者側に問題があります。バイタル自体はすごくいいコンディショナーだと思っていまし、現在も引き続き(量をまもって)使用しています。濃いものがそのままインペに降り注いだ感じもありましたので、入れ方にも問題があったのかもしれません。
私の自宅の水道水はタンクに一度プールされた水がモーターで屋上にいき、水圧で蛇口からでるタイプなので、もともとの水質があまりよくないような気がします。蛇口からでる水はすでに酸化していそうです。なので最近はミネラルを補うためのコンディショナーを定期的に入れるようにしています。知っておかなければいけないのが、コンディショナー自体のペーハーです。大量に使うことにより水槽のペーハーが急に動く場合があるので注意が必要です。そういう意味で、水槽の水で溶きながら、ゆっくり時間をかけて規定量以内の量を添加するのが良いのではないでしょうか。ただ、この手のモノは効果が目に見えて分からないのが残念です。飲み水なら口に含んで「うまい!」ってわかるんですが、水槽の水を口に入れるわけにはいきませんから。その7) そのほかに
他にもいろいろやっていたことがあります。例えばライトです。タイマーにより時間を決め生活にリズムを与える方法です。またそれとは逆にライトを一切使わないのも試しました。上から幕をかけ、絶えず真っ暗な状態にしたほうがインペが活動しやすいだろうという考えです。こまった(うれしい?)事にどちらの条件の水槽でも産卵してしまいましたので、意味がないのかもしれません。他にもインペ単独の水槽より、中層を泳ぐ魚と混泳させたほうが刺激になるかとか、オスメスと思われるインペを2匹で隔離しシェルターを1本だけいれたりとかやりましたが、どうもうまくいきませんでした。結果としていろいろとやってはいるものの、いまいちよく分かっていないのが現状です。一つのことを試して様子をみればいいのもも、例えば水温あげてミネラル入れて、ライト消しっぱなしなど、複数を一度にやってしまうので、それで仮に産卵したとしても結局なにが要因になったのかが分からないでいます。私としてはインペの繁殖に成功している人たちとフォーラムなどをひらいて意見交換ができれば、もう少し確信に触れられるのではと考えています。みなさんはどうやって産卵させていますか?